日本には、さまざまな国籍を持つ外国人の方々が暮らしています。その中で、外国籍を持つ方が日本国籍を取得することを「帰化」といいます。帰化は、単に日本人になるというだけではなく、申請者の人生に大きな影響を与える大切な手続きです。
帰化の種類
帰化は国籍法で「普通帰化」「簡易帰化(特別帰化)」「大帰化」3つの種類が規定されており、それぞれ異なる要件が設定されています。
①普通帰化
日本で一定期間居住し、今後も日本に住むことを希望する外国人の方が対象です。留学や就職、国際結婚などで来日した、多くの外国人の方がこの普通帰化に該当します。
②簡易帰化(特別帰化)
日本と特別な関係を持つ外国人(日本人の配偶者や日本で生まれた方、かつて日本人だった方など)が対象で、帰化の条件が一部緩和されています。とはいえ、帰化申請のために準備する書類の量は、普通帰化と変わらず大量です。また、在日韓国人・在日朝鮮人などの特別永住者の方は、一般の外国人の方より必要書類が多くなる傾向があります。
③大帰化
日本に特別な功労がある外国人の方が対象で、国会の承認が必要です。過去に検討された例はあるようですが、大帰化によって帰化した人は今のところ1人もいません。
帰化のメリット
外国人の方が日本に帰化することで、以下のようなメリットが得られます。
①在留カードが不要になる
帰化すれば日本人ですので、外国人に課せられている在留カードの携帯義務はなくなり、入国管理局での更新手続きも不要になります。就職先が変わった際などに、入管に届け出る必要もありません。
②就労制限がなくなり、国家公務員の受験も可能になる
日本国籍を持つことで就労制限がなくなり、転職や起業が自由に行えるようになります。また、日本人しか受験資格がない国家公務員試験も受けられるようになり、警察官などの日本国籍が必要な職業に就く道も開けます。
③参政権の取得
日本の選挙で投票する権利、選挙に立候補する権利が得られます。
④ローンの審査が通りやすくなる
日本国籍を取得することで信用力が上がり、住宅ローンや自動車ローンなどの各種審査に通りやすくなります。
⑤日本のパスポートが取得できる
日本のパスポートは毎年発表されるパスポートランキング上位の常連で、ビザ(査証)なしで渡航できる国・地域が190以上もあります(2024年現在)。帰化すれば日本のパスポートが持てるため、海外旅行や海外出張の際の手続が簡単になります。
⑥戸籍が編成される
帰化すると戸籍が編成され、日本人の家族と同じ戸籍に入ることも可能になります。これにより、家族関係を証明する際の手続きが簡単になります。
⑦社会保障の適用
年金や保険、福祉制度などで、日本人と同等の社会保障を受けられるようになります。
⑧日本名を取得できる
今まで通称名(通名)を使っていた方も、帰化すれば日本名を取得できます。
帰化のデメリット
一方で、帰化には以下のようなデメリットもあります。
①母国の国籍を失う
日本は二重国籍を認めていないため、帰化するためには母国の国籍を失う必要があります。
②母国との手続きが増える場合がある
日本人として母国に戻る際に、国によってはビザ(査証)が必要になる場合があります。頻繁に母国に帰る場合、手間が増える可能性があります。
③再び母国の国籍を取得することが難しい
一度国籍を離脱すると、母国の国籍に戻す手続きは煩雑な場合が多いです。国によっては、国籍を抜けると母国の国籍に戻るのが難しくなるケースもあります。
帰化を検討する際の注意点
帰化を検討する際は、帰化を希望する理由や目的を明確にすることが大切です。また、母国との関係やご自身の将来の生活設計についても慎重に考える必要があります。
帰化は日本での生活をより豊かにする可能性を秘めていますが、その一方で慎重な判断が必要な手続きでもあります。帰化申請をする際は、法務局や行政書士などと相談しながら進めることをおすすめいたします。