日本人と結婚している外国人の帰化条件

外国人が日本国籍を取得するためには、帰化申請が必要です。日本人と結婚しても、それだけでは日本国籍は取得できませんが、日本人配偶者を持つ場合は一般的な外国人の帰化申請に比べて要件が緩和されます。ただし、緩和されるのはあくまで条件面のみであり、用意しなければならない書類は普通帰化の場合と同等かそれ以上になる場合もあります。本記事では、日本人と結婚している方の帰化条件や、結婚前・結婚後に帰化申請する場合の違いについて詳しく解説します。

目次

日本人と結婚している外国人に適用される帰化条件

①住所条件(緩和)

一般の外国人の場合、5年以上の日本在住が条件となりますが、日本人配偶者の場合は要件が緩和されます。具体的には、以下の条件を満たせばOKです。

結婚前から引き続き3年以上日本に住所を有し、現在も居住している

留学ビザや就労ビザなどで来日し、日本に来て3年以上経っている方が日本人と結婚した場合がこれに該当します。結婚してから3年待つ必要はなく、あくまで日本に居住して3年経った人が結婚すれば条件を満たします。

※「引き続き」とは、日本を出国していた期間が連続して90日以上なく、かつ、年間で合計100日以上日本を離れることなく、現在も日本に居住している場合が該当します。

結婚してから3年経過し、その後1年以上日本に住所を有している

日本人と海外で結婚して、海外で2年以上過ごし、その後日本に来て1年以上住んでいる場合がこれに該当します。

ただし、過去にオーバーステイで在留特別許可を取ったことがある人は、在留特別許可を取った日から10年以上経過していることが必要となります。この場合、緩和要件は適用されないのでご注意ください。

②能力条件(免除)

一般の外国人の場合は、日本と本国の両方で成人年齢に達していることが求められますが、日本人配偶者の場合は問題とされません。

③素行条件

素行が善良であることが必要です。具体的には、税金や年金をきちんと納付していることが求められます。未納額があると審査上マイナスですので、帰化申請前にすべて支払うことをおすすめいたします。ご自身が無職の場合で、年金の第3号被保険者(配偶者の扶養に入っていて年金納付が免除されている)の場合は年金の支払いは必要ありません。ただし、パート・アルバイトなどで扶養の範囲(年収103万円)を超えてしまっている方は、未払い額をすべて追納したうえで申請する必要があります。

また、交通違反や前科がある場合、帰化申請が難しくなる可能性があります。軽微な違反(一時停止違反や駐停車違反など)であればさほど問題ありませんが、飲酒運転などの重大な違反は審査上大きなマイナス要因となります。

④生計条件

ご自身、または生計をともにする配偶者の収入や資産で、安定した生活が営めることが必要です。年収の明確な基準は公表されていませんが、家賃や光熱費、食費などの支出を差し引いても、安定して生活ができると判断されることが求められます。ご自身が専業主夫・専業主婦などの場合は、配偶者の収入が安定していれば問題ありません。

⑤重国籍防止条件

日本は二重国籍が認められていないため、帰化後は元の国籍を放棄する必要があります。

⑥憲法遵守条件

日本の憲法や法律を尊重する態度が必要です。日本を暴力で破壊することを企てるような政党その他の団体を結成したり、これに加入したことがないことが求められます。

⑦日本語能力

国籍法に明記された要件ではありませんが、小学校3~4年生レベル、日本語能力試験(JLPT)でいうとN3~N4レベルの日本語力は求められます。帰化申請後の審査官との面接時には日本語での受け応えが必要となり、また、日本語テストが実施される場合もありますので、日本語が苦手な方は勉強しておく必要があります。

帰化申請を結婚前にする場合と結婚後にする場合の違い

未婚の外国人の方が、「日本人との結婚」と「日本への帰化」を両方考えている場合、どちらを優先したほうがよいのでしょうか? もちろん帰化申請は、結婚前であれ結婚後であれ要件さえ満たしていれば可能ですが、それぞれにメリットとデメリットがありますので、以下に解説いたします。

①結婚前に帰化申請する場合

手続きの流れ

①帰化許可申請
独身の状態で申請するため、結婚や配偶者に関する書類は不要です。そのため、準備する書類自体は少なくて済みます。
②帰化許可
申請から許可が下りるまで、半年から1年以上かかります。許可が下りたら独身の状態で国籍を有することとなりますので、自分1人分の戸籍が編製されます。
③婚姻届の提出
帰化後の結婚は、日本人同士の結婚として扱われるため、通常の手続きで婚姻届を役所に提出します。

メリットとデメリット

・結婚後に帰化申請する場合に比べると、準備する書類が少なくて済む
・結婚後の配偶者ビザの変更手続きが不要
・住所条件の緩和措置がないので、5年以上日本に居住していないと申請できない

②結婚後に帰化申請する場合

手続きの流れ

①婚姻届を提出
外国籍のままで結婚するため、国際結婚として扱われます。日本と母国の双方に婚姻届を提出する必要があります。通常は在日領事館に婚姻届を提出することで、母国でも日本人と結婚したことが正式に登録されます。なお、帰化前に結婚する場合は国際結婚になるので、結婚しても別姓を使うことになります。ただし、夫婦別姓を望まない方は、家庭裁判所に「氏の変更」を申し立てることも可能です。
②帰化許可申請
日本人配偶者として、住所地の法務局に申請します。
③帰化許可
法務局にもよりますが、許可が下りるまで半年から1年以上かかります。日本人配偶者として国籍を有することとなりますので、配偶者と同じ戸籍に入ることになります。

メリットとデメリット

・住所条件の緩和措置があるため、通常の帰化申請より早く条件を満たせる
・日本人の配偶者等ビザがあるため、日本での生活が安定した状態で申請できる
・結婚前に帰化申請する場合に比べると、準備する書類が多い

まとめ

帰化申請を結婚前にするか、それとも結婚後にするかを比較すると、結婚前の方が提出書類は少なくて済むのが特徴です。ただ、日本に5年以上住んでいない方は、申請より先に結婚をすることで住所要件が緩和され、通常の帰化申請より早く申請できるケースもあります。帰化申請を結婚前・結婚後のどちらにしたほうがよいかはケースによって異なりますので、ご自身の状況に合わせ、必要であれば行政書士などの専門家の意見も聞きながら、ベストな申請計画を立てましょう。

終わりに

日本人配偶者の帰化申請は、一般の帰化申請に比べて要件が緩和されているものの、書類準備や手続きは煩雑です。不明点がある場合は専門家に相談し、計画的に進めましょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次