帰化申請をするためには、国籍法に基づいて厳格な条件を満たす必要があります。本記事では、普通帰化で要求される「7つの条件」について詳細に解説します。普通帰化は、特別な要件が適用される「簡易帰化」には該当しない、一般的な外国人の方々が対象です。留学や就職などで来日して日本で生活を続けている、多くの外国人の方々が申請対象となります。
①住所条件
日本に引き続き5年以上住所を有することが必要です。この「引き続き」とは、日本を出国していた期間が長い場合はNGという意味です。具体的には、次の2点をクリアしている必要があります。
・1回の出国が90日以上連続していないこと
・年間で合計100日(法務局によっては90日)以上日本を離れていないこと
上記を超える場合は「引き続き」とはみなされないため、それまで日本に居住していた期間はリセットされ、帰国後から数え直しとなります。この出国の理由が、例えば会社命令の出張であったとしても、考慮してもらえる可能性は低いです。
さらに、5年間のうち3年以上は就労系の在留資格(アルバイトではなく、正社員、契約社員、派遣社員などの雇用形態)を持って就労している必要があります。ただし、10年以上引き続き日本に住んでいる場合は、1年以上の就労期間で認められるケースもあります。
②能力条件
成人年齢に達し、行為能力を有していることが求められます。日本の成人年齢は18歳ですが、申請者の母国でも成人年齢に達している必要があります。成人年齢は国によって異なります。例えば中国やロシアは日本と同じ18歳ですが、韓国では19歳、タイやニュージーランドは20歳、インドネシアやシンガポールは21歳ですので、その年齢に達するまで申請できません。ただし、未成年者であっても、両親と一緒に申請する場合は帰化申請が可能です。
③素行条件
素行が善良であることが必要です。納税義務を果たしていること、犯罪歴がないことなどが重要ですが、非行の程度や回数、経過年数なども含めた総合判断になるため、過去に小さな違反があったからといって必ず不許可になるわけではありません。素行条件では、具体的には以下の点が審査されます。
税金の支払い状況
税金を期限通りに支払っていることが必要です。税金の中でも、主に所得税と住民税が問題になりやすいです。会社員の方で社会保険に入っている方であれば給料から天引きされているので問題ありませんが、会社員の方でも天引きされていない普通徴収の方は、ご自身で確定申告が必要になります。また、会社経営者の方は、個人の税金だけではなく、経営する事業の税金もしっかり納税していることが必要です。株やFX、仮想通貨などで副収入を得ている方は、利益が一定額を超えると確定申告をして納税する義務が発生するので注意が必要です。なお税金の支払い状況については、申請人だけでなく、同居家族全員分が審査対象となります。税金関係に滞納がある方は、しっかりと納税を行ってから帰化申請しましょう。
年金の支払い状況
年金保険料の支払いも、直近1年分は納めていることが必要です。以前は帰化申請に年収は必須条件ではありませんでしたが、2012年の法改正で年金も審査対象となりました。会社員の方で厚生年金に加入しており、給料から天引きされている方は問題ありません。国民年金の方で、ご自身での支払い義務がある方は、直近1年間で支払っていない月がないか確認してみましょう。もし年金を支払っていなければ、帰化申請前の直近1年分を支払ってから帰化申請に臨みます。なお、国民年金保険料の納付猶予や免除を受けている場合は不許可事由になり得ますので、追納してから申請する必要があります。また、会社経営者の方は、会社として厚生年金保険に加入して、年金保険料を払っていることが必要です。個人事業主の方は基本的に厚生年金の加入義務がありませんが、従業員を5人以上雇用している場合は厚生年金に加入しなければなりません。今まで厚生年金保険に加入していかなった会社経営者の方は、今からでも厚生年金に加入し、厚生年金保険料の支払いを開始しましょう。そして、1年分の支払いを終えてから帰化申請する必要があります。
交通違反や犯罪歴
交通違反は、過去5年間における交通違反を審査されます。軽微な違反(一時停止違反や駐停車違反など)でも5回以上ある場合や、重大な違反(飲酒運転、妨害運転など)がある場合は、相当期間を置かないと帰化が認められない可能性が高くなります。犯罪に関しては、生まれて以降すべての期間が対象です。前科がないこと、あっても刑の執行、または執行猶予を終えてから相当年数が経過していることが必要です。
反社会的勢力との関わり
暴力団やその関連団体との関係がある場合も、素行が善良とはみなされません。
④生計条件
安定した生計を営むことができることが求められます。この生計条件は、生計をともにする同居のご家族を含めて判断されます。具体的には、申請者自身または同居する家族の収入が基準となります。つまり、申請人に十分な収入がなくても、申請人と同居するご家族(配偶者や成人した子)に収入があり、世帯として生計を維持できれば問題ありません。
年収の目安
世帯収入で、家族全員がしっかりと生活していけるかどうかを審査されます。以前は帰化の審査に年収の目安はありませんでしたが、近年は審査基準は厳しくなっており、年収300万円以上(月額にして25万円以上)の収入があることが望ましいとされています。扶養家族がいる場合は、さらにプラスアルファが必要です。
借入やローンの返済
住宅ローンや自動車ローンなどの借入があっても、それだけで問題にはなりません。その返済を滞りなく行えるだけの安定収入があり、遅滞なく返済できていればOKです。
貯金の有無
重視されるのは毎月の安定収入であり、貯金額自体はあまり重視されません。
⑤重国籍防止条件
日本国籍の取得によって現在の国籍を失うことができることが条件です。日本では二重国籍が原則認められていないため、帰化申請者は母国の国籍を離脱する必要があります。ただし、母国の法律で国籍離脱が認められていない場合は例外として認められるケースがあります。
⑥憲法遵守条件
日本の政府を暴力で破壊することを企てたり、主張したりしたことがないことが求められます。つまり、暴力団やテロリストなどには国籍取得はできません。なお、この条件は申請人だけでなく、家族・親族の状況もある程度影響すると言われています。例えば、申請人が経営する会社の役員に暴力団関係者がいる場合などは、審査が厳しくなります。
⑦日本語能力
日本語での日常会話や文書作成ができる能力が求められます。国籍法には直接明記されていない要件ですが、日本での生活適応能力の観点から審査対象となります。審査官が面談をして、明らかに日本語レベルが高いと判断されたら良いのですが、判断が難しい場合は日本語テスト(筆記試験)が行われることがあります。日本語での受け答えが求められるため、最低限の語学力を備えておく必要があります。特に、ひらがな・カタカナは完璧に、簡単な漢字の読み書きもできるくらいには勉強しておきましょう。
【帰化に必要な日本語力の目安】
・小学校3~4年生レベル
・日本語能力試験(JLPT)のN3~N4レベル
まとめ
普通帰化を申請するには、これら7つの条件をすべて満たすことが必要です。ただし、これらはあくまで基準であり、実際の審査では申請者の個別状況が考慮されます。また、法務局による内規や裁量も存在するため、事前に専門家に相談し、必要書類や条件をしっかり確認することが重要です。